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泡のように
第32章 31.
「だいたい、大事って、なに?お前リナのこと、なに勘違いしてるの?俺から金取ってハメ撮りさせるような相手、大事なんて思うわけないだろ」

 布団のカバーでごしごし涙を拭いてお兄ちゃんを見上げる。
 暗がりに見えるお兄ちゃんの顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

「前に言ったろ?兄ちゃんは、女性と付き合ったことなんかないって」

 そして、そこらへんにあった取り込んだまま畳んでもいなかった洗濯物からTシャツとハーフパンツを選んで淡々と身に付ける。

「だいたい、あんなブスに、俺が、惚れるわけないよ」

 大きな背中は玄関に向かおうとして、考え直したのか、引き返して私のもとにしゃがみこんだ。

「ごめん。智恵子も、腹減ってたんだよね。なんか、買ってこようか?」

 その顔にはもう、笑みは浮かんでいなかった。
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