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泡のように
第33章 32.
 通学電車では、二度も途中下車して吐いた。
 最後の方は喉が切れて唾液に血が混じっていた。
 それでも私はあの変態に会いたいと思った。
 どうしても会いたくてたまらなかった。
 こういうのって、どっちが人でなしってことになるんだろう。




 生徒専用喫煙所に呼び付けた私を、先生は呆れたような笑顔で見下ろしていた。
 朝のHR開始のチャイムが響いている。
 先生もまた、私と同様、崩壊し始めているらしい。


「なんか山岸、おまえすげぇ痩せたな」


 いいや、最初から崩壊していたのだ。
 だから、こんなところで先生は煙草に火を付けたのだ。


「つわりが重くて」


 白い煙が冷たい風に流されて空に消える。
 ほかの男の子供を妊娠している元カノを抱き締める男の思考回路も、よく分からない。

「マジかよ。かわいそうになぁ」

 先生は私を強く抱き締める。
 私もまた、その逞しい腕を強く握り返す。
 なんていうのかな、この、悦に入った感じ。
 少女漫画のヒロインみたいな、2人の男のあいだで揺れる、美少女的な。
 実際は変態が2人、中庭にいるだけの光景なんだけど、私たちの場合。
 それなのに、前みたいに冷めないのは、なぜなんだろう。



「キスしないの?」

 身体を離した先生に率直に尋ねた。
 
「できるわけねぇだろ」

 そんなふうに笑って、吸いかけの煙草を地面に落として、ゾウリでもみ消す。

「彼女でもねぇのに」

 この男に我慢強さという意外性の高いオプションが備わっていたことはすでに承知している。
 だから私は素直に身を引いて、先生の、お兄ちゃんと同じくらいの高さに存在する肩と、目の横にある傷を見上げていた。

「なにか私に話したいことがあるんでしょ?」

 今頃地面の上でくしゃくしゃに潰れて灰になった煙草の匂いが鼻にきて、胃の中が渦を巻いたように畝って吐き気がこみ上げる。
 吐くときの顔はさすがに、先生には見られたくない。
 だから両手で顔を隠して、先生の返答を待つ。
 先生は「あぁ」って短い返答を述べたあと、語り始めた。

「話ってほどじゃねぇけど。ま、メールした通りだよ。バッカみてぇだよな。俺、お前に振られたのに。未練ったらしくこんなことして」


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