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泡のように
第35章 34.
 何度も何度もチャイムが鳴る。
 思い出したかのような執着心だ。
 私が出て行ってから6日も経ってようやく我が子と妹のことを思い出したのだろうか?
 
 橙色の室内をバイブ音とチャイム音が支配している。


 電話には出なければいい。
 ドアは開けなければいい。
 鍵も掛かってるしロックもしてある。
 先生が言った通り、居留守を使えばいい。
 だって私は先生に助けてって、お願い助けてって言った。
 だから先生は何もかも差し置いて私を助けてくれた。
 その結果今。

 先生を信じたいんでしょ?
 先生が私を愛してくれてるって信じたいんでしょ?
 私も今度こそ本当に先生を愛せるって信じたいんでしょ?
 揺れてる自分が嫌なんでしょ?
 


 なのに、どうして揺れているのか。
 なぜダンシングフラワーのような動きで揺れているのか。
 私の心は。



 唐突に、ドアがけたたましく音を立て始めた。
 私の名前を呼ぶ声と共に。

 なんなんだ、このサラ金の取り立てのような事態は。
 冷や汗が脇に滲む。

 ドアを叩きながら、お兄ちゃんが私の名前を呼んでいる。
 ここまで私に対する執着心が溢れているなら、もっと早く迎えに来いよでないと説得力ねぇよ、と心の中で冷静に呟く自分もいる。
 
 
 無意識に両手で耳を塞いで、タオルケットから羽毛布団へと衣替えを終えたベッドに潜り込み、身体を丸くして借金取りが諦めるのを待つ。
 しかし、何分経ってもお兄ちゃんという名のサラ金屋は私という名の債務者に対しての取立てを諦める気はないらしく、事態は悪化の一途を辿っている。

 
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