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泡のように
第37章 36.
 もう二度と迎えになんて来ないよと宣言したとおり、お兄ちゃんはあれから一度も突撃して来ないし、もちろんメールも電話もしてこない。
 お兄ちゃんは今頃、誰の心を支配しているんだろう。
 なんて、リナの陰気な顔を思い出している時点で、決まりきったことなのだろうけど。






「これ正気なの?」



 駅前のミスタードーナツ。
 揚げ油とコーヒーと坦々麺の香りが混在する店内。
 土曜日の14時ということもあり、席はほぼ満席。
 なのに4人掛けテーブルを2人で独占するあたり、肥満の母を持つ娘としては肩身が狭いところ。
 お母さんはピアニッシモの細長い箱から細長い煙草を引き抜くと、極太の指2本でソレを挟んでジッポで火を着けた。
 テーブルの上に、中身を確認した分厚い茶封筒をボンと投げ置いた上で。

「結納つったって、お母さん一銭もお返しとかそういうのする気ないって話してあるんでしょ?」

 久しぶりに会うお母さんは、更に太った気がした。

「なに?あんたの旦那になる素敵な先生ってのは石油王かなにかなの?」

 口が開いたままの茶封筒は広辞苑並の厚さだ。

「なにか勘違いしてるんじゃない?ウチが片親だと思ってナメてるわ。あのね、お母さんずっと節約のために団地に住んでたけどね、ちゃんと貯金もしてるし実家から受け継いだ土地だって持ってるわけ。老人ホームの入居費くらいとっくに貯めてるわよ。あんたの学資保険だってまだ満期になってないけどちゃんとしてるしね。だからこんなにいらないって返しといて」
「そう言われても、先生のオトーサンが決めた額だから私にはなんとも」

 お母さんは忌々しく鼻をフンと鳴らした上で、何の迷いもなく私の顔に向かってケムリを吐き出した。
 咳き込む私に、お母さんは言い放つ。

「あんた自尊心とかないわけ?聞いて呆れるわ。あの男がバカなら親のほうは救いようのないクズね。肩書きは立派でも脳はまるであんたと同レベルよ。まぁあんたみたいなバカが嫁ぐには最適すぎるとも言えるわ。高校生が妊娠なんかしてみっとみない。今でそんなお腹で、卒業式は一体どうするつもりなの?」

 火のついたままの煙草を灰皿の上に放置した上で、お母さんはドーナツを手に取り、大きな口でガブりと噛み付いた。
 
 ポンデリング、ポンデリング、エンゼルフレンチ。
 総カロリーは如何程だろう?
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