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泡のように
第37章 36.
「ハッ!わからないの?フン。だからあんたは現代文まで追試だったのよ。あんたの素敵な旦那様に小学校1年から国語を教えてもらったら?そうよ。赤ん坊が生まれたらあんたも赤ん坊と一緒にイチから色々学んだら?篤志みたいなあんたになんかするような兄もいなくなるんだから、そうしたら今度こそちょっとはまともになれるんじゃない?そうよ。人生やり直しなさいよ。まぁどうせ、あんたはバカだから子供にすらバカにされるだろうけどね」
「ハッ、ケンカ売ってんの?」

 思ったより、大きな声が出た。

「私が今までどんな気持ちで生きてきたかわかってんの?」

 周りのテーブルの客が一斉に、童顔の中学生みたいな妊婦に向かって振り返る。

「あんたみたいなのが母親で、ろくに掃除もしないで、ろくに料理もしないで、仕事仕事って言い訳して飲み歩いて、どんどんデブになって、いつもイラついてて、私がお兄ちゃんになんかされてても山岸のジジイになんかされてても見て見ぬふりしてて、それでもお母さんが大好きだって言い聞かせてふつうの娘装って生きてきて、いまだって私がこんなふうに生きてても関係ないわって無視してて、そんなふうに生きてきた私の気持ちわかってんの?」

 オランウータンは口元に笑みを浮かべていた。

「ちょっと、騒がないでよ。まったく病院でも騒いであんたは・・・つくづく生まれた時から迷惑な子ね。お母さんがあんたの気持ちなんか知るわけないでしょ。まともに生きたいなら私たち全員嫌いになってまともに生きればよかったのに、そう出来ないのはあんたの性分の問題よ。本当にまともに生きたかったなら篤志にも山岸さんにもヤメテって言えばよかったでしょ。あんたの素敵な旦那様のことも生徒に手を出すキチガイって思うべきだったでしょ。お母さんはなにも悪くないわよ。あんたを養ってやったし、義務教育も受けさせたし、必要なものは買ってやったし。むしろあんたこそお母さんに返してよ。山岸さんと篤志を返してよ」

 そうよ。
 オランウータンはまたもや私の顔に白い煙を吐き出した。
 咳が止まらない。

「あの女もあんたみたいに、全部あんたのせいだってお母さんを責めたわ。篤志だって、あんたたちみたいなやり方じゃなかったけどね。お母さんを責めたわ。フン。美人はいいわよね。泣けばみんなが同情してくれるんだから」

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