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泡のように
第8章 7.
 ティッシュ紙の中から現れた四つ折りの紙幣を広げ窓ガラスに差し込む光に当てると、諭吉の顔が亡霊のごとく円の中に浮かび上がる。偽札なワケないのに、いつも無意識に確認してしまう。そして本物だと理解すると視界が歪み、うう、なんて情けない声を噛み締めた歯の間から漏らしてしまう。

 律義なのか、バカなのか、優しいのか、骨の髄から最低な男なのか、篤志のことが、私にはよく分からない。

 最初から身体だけで、フッたあとも私の身体を使うなら、ずっと同じ嘘を吐き続けて私を騙せばよかったのに。

 壱万円なんて置いて行かれても、私はデリヘル嬢でも援助交際で身を売る女子高生でもなんでもない篤志の妹なんだから意味を受け止め切れない。

 泣きながら、壱万円札を握りしめて台所の食器棚に置かれたおっさんのダルマの貯金箱に向かった。見るからに現世利益的な金色のダルマの四角く開いた背中のクチにぐしゃぐしゃになった紙幣を突っ込む。毎年大晦日にダルマのケツを開くおっさんは、過去2回遭遇したぐしゃぐしゃの壱万円札に対し、どんな感想を抱いたのだろう。


 ベッドの上でおっさんの煙草をふかしながら考える。煙草なんてただでさえ出来の悪い脳を更に悪くするだけだし、何より美容に悪いとは分かっている。しかし他にフラストレーションから逃れられるものが現時点ではニコチン以外手元に何もない。背に腹は変えられないのだ。

 振り返ってみると、一度目はお兄ちゃんとの関係が終わったばかりの、中学卒業を間近に控えた冬だった。
 運悪くインフルエンザに感染した私を、インフルエンザに感染しつつも既に治りかけだったお兄ちゃんのところにお母さんが隔離させた晩のことだ。
 高熱に魘される私の額に冷えピタを貼ってからお兄ちゃんは私のパジャマを脱がせて脚を左右に開いた。
 ご、ごめん。智恵子ごめん。させてくれな、な?
 別れてから数ヶ月ぶりに、返答を待たずにお兄ちゃんは私の上に乗った。
 間接が激しく痛む意識朦朧の最中でもお兄ちゃんに慣らされ続けた私の身体は何の問題もなくお兄ちゃんを受け入れた。熱に魘されながらも、背中に腕を回して何度も好きだって、やり直したいって、伝えた。
 けれど数日経って熱が下がって隔離生活が終われば元通り。
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