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泡のように
第11章 10.
 ピル服用をはじめてから4年、一度も飲み忘れたことなんてなかった。
 どうして昨日は忘れてしまったんだろう。
 慌てて床の上に落ちた衣服を拾い上げ、先生に言った。

「ごめん、早く帰ろう、早く飲まなきゃ気が気じゃないや」
「7月か」

 慌てる私をよそに先生は呑気に指を折りつつ煙草をふかしている。
 イラつきながらシャワーも浴びずにパンツを脚に通す。

「2日分くらいならまとめて飲んだっていいんだけど、絶対じゃないから怖くて・・・ねぇ、先生」
「もういいんじゃないか?薬。飲まなくても」

 は?
 声にならない声が喉から歯の隙間を通って流れ出す。

「仮にデキたとして、生まれるのは卒業したあとだろ」

 先生はヒトゴトのように簡単に言ってのけた。
 自分で何を言っているのか分かっているのだろうか?

「デキたとしてって・・・何言ってんの?」

 バカなの?はさすがに口には出さずにおいた。

「卒業式は3月1日だろ、ギリギリ間に合うだろ」
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