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泡のように
第12章 11.
 そりゃあ、智恵子みたいに素直で可愛くてやらしいカラダした妹が家にいたらさ、悪戯したくもなるよ。
 俺の妹は力士だからピクリともしねぇけど、智恵子みたいな妹なら俺だってどうかしちゃってると思うわ。
 自分になついてて、中身はガキのくせにカラダは女でさ、そんな妹に抱き着かれてみろ、まともでいたくたって頭がおかしくなるよ。
 どっかの知らねぇ男に汚される前に自分のモンにしたいって思うの普通だろ?
 ガキなら素直に言うこと聞いて、疑いもせず、自分の思い通りになる女にできるしさ。
 お前の兄貴みたいに大人の女に相手にされないような男なら尚更、そーゆー考えを深層心理の部分で持ってたりするしな。
 俺はお前の兄貴のこと、おかしいと思わねぇよ。
 俺と同類だな。
 兄貴の気持ち、よーく分かる。
 って、わかっちゃ教師失格だよなー。
 でもなんで、兄貴はお前を捨てたんだろうな。
 こんないい女、もったいねー。
 まぁ、そのお陰で俺はお前を抱けるんだけどさ。


 どれくらい経ったんだろう。
 ガチャン、重たいドアの音が聞こえたから顔を上げた。

「ち、智恵子、なにしてんだよ」

 歯ブラシを口にくわえ上半身裸というスタイルで、お兄ちゃんはドアの隙間からギョッとした顔で私を見つめていた。

「さ、さっき、ド、ドアの音がしなかった気がしたから、気になってて一応、見てみたら、そこにいたからびっくりしたよ、は、早くウチに入りなさい」

 風呂上がりなのか、お兄ちゃんの部屋から暖かく湿った空気が流れ出している。
 濡れたままの髪の毛はクルンと毛先が丸まり、汗と混じった雫が首筋に垂れていた。
 座ったまま、黙ってお兄ちゃんを見上げる。カバンの中のスマホが、再び振動しはじめた。
 鳶色の瞳が私のカバンを見つめる。
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