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泡のように
第12章 11.
お兄ちゃんはしばらく黙っていた。
長い沈黙ののち、私から身体を離すとタオルケットを蹴り上げて起き上がった。
「智恵子の彼氏、見たよ」
「え?」
予想外の言葉に、つられて私も起き上がる。
「どこで?」
「病院で」
「ええ?」
「夜間出入り口の前にいたろ?あのへんに、兄ちゃんもいたんだ」
「そうだったんだ」
「あれ、学生じゃない、よね?随分老けて見えたよ。何してる人?いい車に、の、乗ってたみたいだけど」
いつものように吃った語尾に、ほんの少し嫉妬の色が滲んでいるように感じたのは、私の気のせいだろうか。
「ああ・・・別にあれは・・・。ううん。なんでもないや。私の彼氏は、ただの教師だよ。1年の時、担任だったの」
お兄ちゃんは大きな瞳を更に大きく見開いて、唖然と私を見つめている。
「どうも、先生って立場の男じゃないと私、燃えないみたい」
自嘲を含めて笑ってみても、お兄ちゃんは笑わなかった。
「嘘。たまたまだよ。お兄ちゃんに似てたから好きになっただけ」
お兄ちゃんはまた黙り込んで、今度は急に兄貴ぶった真面目な顔つきになり、同じく真面目な口調で言った。
「わ、悪いこと言うようだけど・・・智恵子、その人に、遊ばれてるんじゃない?高校生相手に教師が本気になるなんて兄ちゃんは思えない。兄ちゃんも女子生徒を教えてるけど、恋愛対象になんて、絶対ならないよ」
自分のしていることを棚に上げて?
よく言うよ。
長い沈黙ののち、私から身体を離すとタオルケットを蹴り上げて起き上がった。
「智恵子の彼氏、見たよ」
「え?」
予想外の言葉に、つられて私も起き上がる。
「どこで?」
「病院で」
「ええ?」
「夜間出入り口の前にいたろ?あのへんに、兄ちゃんもいたんだ」
「そうだったんだ」
「あれ、学生じゃない、よね?随分老けて見えたよ。何してる人?いい車に、の、乗ってたみたいだけど」
いつものように吃った語尾に、ほんの少し嫉妬の色が滲んでいるように感じたのは、私の気のせいだろうか。
「ああ・・・別にあれは・・・。ううん。なんでもないや。私の彼氏は、ただの教師だよ。1年の時、担任だったの」
お兄ちゃんは大きな瞳を更に大きく見開いて、唖然と私を見つめている。
「どうも、先生って立場の男じゃないと私、燃えないみたい」
自嘲を含めて笑ってみても、お兄ちゃんは笑わなかった。
「嘘。たまたまだよ。お兄ちゃんに似てたから好きになっただけ」
お兄ちゃんはまた黙り込んで、今度は急に兄貴ぶった真面目な顔つきになり、同じく真面目な口調で言った。
「わ、悪いこと言うようだけど・・・智恵子、その人に、遊ばれてるんじゃない?高校生相手に教師が本気になるなんて兄ちゃんは思えない。兄ちゃんも女子生徒を教えてるけど、恋愛対象になんて、絶対ならないよ」
自分のしていることを棚に上げて?
よく言うよ。