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藍城家の日常
第4章 手取り足取り腰取り
夜光の小さな呟きが、誉の耳に届いたかは定かではないけれど……
快感で口元を何となく緩ませる、不思議なほどに妖艶な誉に口づけをせがまれて、彼は望み通りにその唇を塞いだ。
『んふっ……!ぁ、んぁ……ふ、』
くちゅ……っちゅ、
かぶりつくような勢いの激しい口付け。
それでも誉は引き寄せられるように、するりと受け入れる。
肉厚な舌と舌が久しぶりに絡んで、お互いの唾液を交じわす。
夜光の舌は相変わらず少し冷たくて、気持ちがよかった。
あぁやっと……
心も満たされていくような、そんな感覚を誉は覚えた。
私は夜光様の口づけを恋しく思ってる。
彼と唇を重ねることは、麻薬のように甘美で、依存性がある。
『はぁ……っ』
長い口付けからやっと唇が離れると、うっとりとする誉とは裏腹に、夜光はなんだか微妙な顔をしていた。
誉はそんな彼をぼんやりと見つめて、コトリと頭を傾げた。
『……夜光様?』
「お前の口の中……苦ぇ」
彼がぐいっと口を手で拭いながら、こちらを横目で見つめている。
そのちょっと歪んだ、眉の造形が美しい。
誉は、ふ、と苦笑した。
『それが……あなた様の、味ですよ……っ』
これからもっとくださいね、お口にも、私の中にも……
そうして、ペロリと、自分の唇を舐めた後、再び腰を降り始める。
『あっあっ、ぃいっ……!やこうさま、やこうさまぁっ!もっと……もっとっ、なか、出してぇ……っあああアアっ……』
暑い夏の、オレンジ色に染まる夕方。
玉のような汗の雫を伝わせながら、お互いの熱を混ぜ会う。
庭で蜩が鳴いている気がしたけれど、それもすぐに誉の鳴き声にかき消されていった。
《続》