この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
藍城家の日常
第5章 謎の黒兎の瞳も赤

“彼女”は小走りで夜光に近づいて、腕を広げた。
ふたりはまるで磁石と磁石がくっ付くように、お互いが吸い込まれるように、抱きしめ合う……

その様が誉の瞳に焼き付いていく。

ここからでは夜光の表情は見えない。今も無表情でいらっしゃるのだろうか?
それとも……

“彼女”は夜光の頬に手を添える。
まるで何年も会っていなかったみたいだ。切なそうに、また嬉しそうに微笑んでいる。

誉の胸はぎゅいっと抓られているみたいに痛い。



顔と顔が、合わさる……
少し背伸びをする“彼女”に調子を合わせて屈んだ夜光の髪が垂れて、何も見えなくなってしまったけど、

ふたりはきっと、口付けを……している……


『……っ』


目の前の映像がジリジリと脳裏にまで焼き付いていく。
誉の声になりそうもない何かが喉までせり上がってきた時、炎鬼がバタン!と大きな音を立てて戸を閉めてしまった。

その手前、“彼女”の赤い瞳がこちらへ向いていた気がした。

もう少し見ていたかった気持ちと、安堵が入り混じったまま、誉は炎鬼を見つめる。


『兄さん?』

「お前はもう見るな!何だあれは?誰だあの女は?さっき何をしていた?あ、いや、お前は何も考えなくていい。待っていろ、俺が行って確かめて来る」

どうして、炎鬼兄さんがそんなに動揺するのだろう?
どうして炎鬼兄さんが、そんなに苦しそうな、悲しそうな顔をするのだろう?

誉は少し可笑しく思いながら、彼を落ち着かせるようなゆっくりした口調で


『炎鬼兄さん、良いんです。夜光様はこれからお出掛けにならますから、邪魔をしてはいけません』


そう言って、口元を上げて頭を振る。

無理に笑っているそんな誉の様子に、炎鬼は胸が締め付けられる思いがした。


「それで良いのか?お前は……」

『……炎鬼兄さん、お粥、せっかく作ってくれたのに冷めてしまいますから、頂きますね』


誉は一口それを食べてから、美味しいと呟く。
蜂蜜と檸檬の甘酸っぱい粥は、記憶に残っている味よりも酸っぱく感じた。


/156ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ