この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
藍城家の日常
第5章 謎の黒兎の瞳も赤


ーーーーー

熱に邪魔されながらも、何だかんだでいつの間にか眠っていた。

誉は、夢を見ていた。

辺りは真っ赤だ。

それは夕日の赤なのか、紅葉の赤なのか、炎の赤なのか、血の赤なのか、よく分からないけど、真っ赤だった。

目がちかちかしておかしくなるような、一面の赤い世界の中で、誉は立っていた。

背中がずきずきと鈍痛を訴えている。
どうして痛いのだろう?
誉にはよく分からない。


「あ」


少し歩いてみると、遠くに人影が見えた。

男のような……女のような……
老人のような……子供のような……

なんにでも見えてしまうその影を、誉は恐ろしいとは思わない。
むしろ、懐かしく感じる。


ーーーあなたは誰ですか?そちらへ行ってもいいですか?


手で口を囲って大きく叫ぶと、人影はくるりと背を向けて歩いていく。


ーーー待ってください!


付いてこい、と言っているのか……
それとも、来るなと言っているのか……

どちらかは分からないけれど、誉は慌てて駆け出した。


ーーー行かないで!


人影にはいくら走っても追い付かない。

やがてそれはかげろうのように、ゆらゆら揺れて、分散して、赤と混ざっていく。

誉はそれが消えてしまったら、二度と現れないような気がした。


ーーーひとりにしないで!





消える。
掠れた悲痛な叫び声は届かなかった。



「……っ!」


誉はバチっと瞼を開ける。

突然現れたぼわりとした視界は、徐々に黒いもやが取れて鮮明になった。

ーー夢……

久しぶりに、あの夢を見た。
幼い頃からずっと見続けている夢だ。

しかし誉にとってそれは悪夢、というような印象はない。

けど、どこか不気味で寂しい夢。


「ん……」


午前よりはいくらかマシになった重い頭を起こして、誉は体が汗だくになっていることに気付く。

残暑と熱で身体中から吹き出た汗は、また服と布団を湿らせていた。

暑苦しくて、誉は衣を緩くする。

風を入れようと窓を開けると、オレンジ色の外の景色から夕方になったことを知る。

結構眠っていたようだ。

ふわりと頬を撫でていく涼しい風を感じていると、

玉砂利の音がした。


/156ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ