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藍城家の日常
第5章 謎の黒兎の瞳も赤
「ぴったりだな……誉」
夜光の声はどことなく満足そうで
本当に、指輪は自分の指にちょうどよく納まっていた。
淡く、優しい銀色をした真鍮の指輪。
その中央には深い深い青……藍色の石が、角度を変える度、様々に光を反射させて輝く。
綺麗……
『……夜光様……』
あぁ、あの時……彼が出かける前に私に左手を見せろと仰ったのは、こういうことだったのか……
そう、誉はやっと理解した。
するり、と夜光の右手が誉の左手に這い、絡み付く。それはとても、官能的に……
「なぁ、誉……お前は……誰のものなんだ?」
ふわりと彼の前髪がかかる。お互いの額と額がくっつく距離。
『私は……』
夜光の視線は、泉のように涙が溢れる誉の瞳に真っ直ぐ向けられていた。
彼の唇、体温、態度や眼差しはいつも冷たく感じるけれど……
赤い瞳の奥はこんなにも、燃えるように、熱い……
よく探さなければ分からない場所に隠れている、情熱……
『……私は……あなた様の、ものです……』
「そうだな……お前は俺の女……これでしっかり自覚できたか?」
つっと、指輪をなぞる彼の指。
私は彼の……夜光様の妻。
藍城誉。
『……はい』
「……あと、変な勘違いをしているようだから言っておくが、今朝から一緒に居たのは俺の妹……夜那」
『夜那、様……』
知らなかった。彼に妹が居たなんて。
誉は心の中のもやもやがどこかに追い出されて、無くなっていくのを感じた。
あぁ、私……
嫉妬していたのだ……
あのもやもやの、汚い気持ちは嫉妬だ。
私、夜光様が好きなのだ……
夜光様“で”良いのではなくて、夜光様“が”良いのだ……
私がこの屋敷に来た時に夜光様が仰っていた通り、心も身体も、今は彼にすっかり溺れてしまっている。
……とぷん……っ
底に、沈んでしまっている……