この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
藍城家の日常
第5章 謎の黒兎の瞳も赤

それから夜光は誉の着物を整えて、彼女の額に口付けをする。

肌に触れるか触れないかの、優しい口付けは名残惜しそうに離れた。


「……そろそろ戻らねぇとあの男がうるせぇ。それに夜那もお前に合いたがってる……誉、居間に戻るぞ」

『……はいっ』


誉は涙の跡を拭った後、左手を大事そうに見つめて、頷いた。


ーーーーー


屋敷の居間で、炎鬼達は他愛のない話をしていた。
夜光と夜那の故郷の話、好きな茶菓子の話……

そんな中、炎鬼は内心、誉の事が心配でたまらなかった。
あの男に、酷いことをされてはいまいかーーー

そわそわと落ち着きのない炎鬼に、架音と夜那は何度も大丈夫だと宥めたのである。

……、、


「!」


廊下を歩く足音がふたつ。

居間に入ってきたのはいつも通り無表情な夜光と、顔色も大分良くなって、ふわふわ微笑んでいる誉だった。

あの様子だと、誤解も解けたようだ。


「誉、大丈夫か?」


炎鬼がおずおずと尋ねると誉はこくりと頷いた。


『炎鬼兄さん、私……勘違いをしていたみたいです』

「あぁ、そう……みたいだな」

(!)


炎鬼は誉の慈しむような温かい視線が、彼女の左手に注がれていることに気付いた。

ーー指輪。

そうか、

あの男……夜光は、誉のことをちゃんと考えていたのだな、と炎鬼は夜光を少しだけ……認めようと思った。

と同時、

彼女が傷付かなくて、良かった。
そう炎鬼は心底安堵して、張りつめていた体の力が抜けていった。


「良かったねぇ、誉」

「おめでとう……」


架音と夜那は、ふたりとも嬉しそうに笑っていて、誉は幸せで胸がいっぱいいっぱいになった。

返事の代わりに笑顔を浮かべる。
それから、くるりと夜光の方へ首を向けて見上げる。


『夜光様』

「……何だ」

『好きです』

「「「」」」


微笑みながら突然そう言った誉に、夜光を含め、そこに居る者は目を見開いたまま固まってしまった。

やがて架音はにひっと笑い、炎鬼はぽかんとし、夜那は頬をほんのり染めて口元に手を当てる。


「…………知ってる」


夜光は伏し目がちになって、誉から目を反らした後、ばつが悪そうに顔に手を覆った。




《続》


/156ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ