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藍城家の日常
第5章 謎の黒兎の瞳も赤

おまけ

~指輪に込められた想い~


わだかまりは溶け、事は一段落付いたその夜。
誉は藍城家の屋敷に一晩泊まって行った夜那と、夜の縁側で話をした。

ぽつりぽつりと話をしていうちに、夜光の羽織を肩にかけた誉は、彼女に今日あったことを打ち明けた。


「そう……それで、夜那と夜光が……ちゅーしてると勘違いしたんだ……」

『はい……私、あの時……夜那様に嫉妬しました』

「夜那に嫉妬……変なの」

『……ごめんなさい』

「ううん……」


リー、リー……

辺りは夜に沈んでいて、虫の鳴き声が静かに響いていた。
お互い、香茶の入った湯呑にゆらゆら浮かぶ月に目を落としたまま、ふたりはふっと笑う。

ーー挨拶には頬に口付けをするーー

彼が仰っていたことは本当だった。
事実、その後改めて誉が夜那に自己紹介をすると、彼女に頬に軽く口付けをされて、はじめましてと言われたのだ。

不思議な文化……
ふたりの故郷は、一体どんな場所なのだろう?いつか、見られる時が来るだろうか?

いつか……


『でも、そのおかげで私……夜光様が好きなのだと知れました。今まで霧がかかってぼんやりしていた気持ちが、はっきりしました』


初めて……恋と言うものがどんなものか分かった。
こんなにも、たくさんな気持ちで満たされるものなのだと。

誉は湯呑を持ったままの指で指輪を優しく撫でた、指輪は、月の光に照らされて淡く輝いている。


『この指輪……夜那様も一緒に選んでくださったんですよね』

「ん……」

『あの……ありがとう……』


頬を桃色に染めて、少し照れながら呟く誉に夜那も自然と頬が上がる。

『!』

あぁ、なんて……美しい、不朽の笑み。

誉はうっとりと彼女を見つめた。
そこはやはり兄妹なのか、夜那の赤い瞳を見つめていると、段々と吸い込まれてしまいそうな、そんな魔力を感じる。


「ね……その指輪の石、分かる?」

『この藍色の石ですか?』


誉はじっと石を覗き込んでみるがそういう知識も無いので、そうしたところで分かるはずがなかった。



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