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藍城家の日常
第6章 我妻のこと
熟れた林檎のように真っ赤な顔で、ぎゅっと目を瞑る誉。
耳を澄ますと、いつもより早く打つ彼女の心臓の鼓動が聞こえてくる。
「……」
……こんな調子なのだ。
指輪を渡した日の夜以来、誉は好きと言う言葉を積極的に言おうとはしない。
やたらと恥ずかしがる。
“好き”の二文字を言うことが、彼女にとっては大変らしい。
あの時はあんなに平気に言ってのけ、周りを驚かせたくせに、今さら何故……?
と、夜光は自分の事は棚上げにしていることには無視をして考える。
「……もう一度、言ってみろ……」
赤く染まった彼女の耳たぶを甘く噛みながら、情けなくも愛の言葉を乞うと、誉は『ひぅ』と奇声を上げて体を縮めた。
胸元から首筋にかけて風呂上がりの名残を感じる温かな蒸気、そしてほろ甘い石鹸の香り。
冷たくなっている髪の毛が、己の頬や唇にひやりと触れる。
「……誉」
『や、こう様……』
「お前は誰のものなんだ……?」
広げた片方の掌全体を誉の体に這わせながら、腰紐を解き、その小さな体を暴いていく。
艶を含んだ吐息は聞こえるのに、誉はだんまりしているだけである。
俺は内心不満で仕方が無い。
愛と服従の言葉が欲しい、一度きりでは足りない、もっと。
分かっている、俺は支配欲と独占欲の塊のような男だ。
自覚はしているが、改善する気は
さらさら無い。
「何故……」
夜光はむっすり眉をしかめてそっぽを向いたままの誉の顎を掴んだ。
こちらを見るその瞳はこんなにも語っているというのに。
目は口程に物を言う、か……?
あからさまに不満を見せた俺に、誉は申し訳ないような、恥ずかしそうな表情で呟いた。