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藍城家の日常
第6章 我妻のこと


『ん、んぅっ……ふ』

「……ん、……、」


船を漕ぐように体を揺り動かしながら、貪るような口付けを続けると、くぐもった可愛い誉の声が合わさった口の中から耳へ響く。

吐息も唾液も、火照った体から吹き出す汗も、熱い体液や粘膜も混ざりあい、一つになっていく……

全部、溶けてしまえばいいと思う。


『んはっ……』


このまま口付けを続けると、どうやら誉の息が持ちそうにないと見た夜光はゆっくりと唇を離した。

それからそのか弱い体を持ち上げて、向かい合った形で自分の膝の上に乗せる。
小さな衝撃で誉はびくりと肩を震わせた。


『はっ……あぁ……っ!』


すぐさま白くて柔らかい腕が、首に絡みついてくる。
俺はそれが甘える子供のようにも見えるし、また、誘惑してくる淫魔にも見える。

誉は小さく声を漏らしながら、ぼうっとした顔で夜光を見つめた。


『ぁ、……ん……、夜光様、すきっ……!』

「……!」


目を見張る。唐突な“好き”の言葉に、夜光は虚を突かれた。


『すき、すき、すきっ……』


まるで誉は、壊れてしまったおもちゃのように、何度も何度も熱く濡れた視線を俺に向けながら、そう呟いている。

先程言っていた事と違うだろうが……

そう俺は心の中でぼやくが、熱に浮かされて素直になっている誉が愛しくてたまらない気持ちになった。



「…………俺は愛してる」



彼女の耳元まで口を持って行って、ぼそり。


『っっ!!』


ぎゅううっ


「うっ……おい、誉……っ締めすぎだ……力、抜け……っ」


まるで誉の中は、俺を握り潰そうとしているようにきつくなる。
夜光は眉をしかめて目を瞑り、誉の首筋に顔を埋めた。

白くて柔らかい肩に、藍色の絹糸のような夜光の髪が美しく垂れる……



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