この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
藍城家の日常
第1章 私の旦那様
(あ……)
右手を顔に当てている夜光を見て、誉は目をパチパチした。
(照れている……のだろうか、もしかして、喜んでらっしゃる?)
右手を開いたまま顔を覆って、表情を隠そうとする、彼の癖なのだ。
そうすれば、ゆるゆると上がる口元も、赤くなる頬も、大体隠れてしまうではないか。
『夜光様?』
チャプ……
そろりそろりと近付いて、誉は夜光を覗いた。
相変わらず喜怒哀楽が見えないお方だけど、なんとなく伝わってくる。
口元が緩んでいる……気がする。
彼は嬉しいのだ。
「…………ワルカッタナ」
『は?』
夜光は誉と目を合わさずに、聞き取るのがやっとの声量で謝った。
が、水の音でかき消され、生憎誉の耳には届かなかったようで……
『何か仰いましたか?』
「何でもねぇ」
聞き返さればつが悪くなり、それで終わってしまった。
むっつりして黙りこくっている夜光に、誉はまた不安になる。
そろり……
チュ……
誉はそっと、夫の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの、小鳥のような可愛いキス。
『もう……夜光様、私はあなた様の妻です。裏切ったり、しませんから……』
誉はまっすぐに夜光を見上げて、安心してほしくて、ふわりと笑ってみせた。
右手を顔に当てている夜光を見て、誉は目をパチパチした。
(照れている……のだろうか、もしかして、喜んでらっしゃる?)
右手を開いたまま顔を覆って、表情を隠そうとする、彼の癖なのだ。
そうすれば、ゆるゆると上がる口元も、赤くなる頬も、大体隠れてしまうではないか。
『夜光様?』
チャプ……
そろりそろりと近付いて、誉は夜光を覗いた。
相変わらず喜怒哀楽が見えないお方だけど、なんとなく伝わってくる。
口元が緩んでいる……気がする。
彼は嬉しいのだ。
「…………ワルカッタナ」
『は?』
夜光は誉と目を合わさずに、聞き取るのがやっとの声量で謝った。
が、水の音でかき消され、生憎誉の耳には届かなかったようで……
『何か仰いましたか?』
「何でもねぇ」
聞き返さればつが悪くなり、それで終わってしまった。
むっつりして黙りこくっている夜光に、誉はまた不安になる。
そろり……
チュ……
誉はそっと、夫の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの、小鳥のような可愛いキス。
『もう……夜光様、私はあなた様の妻です。裏切ったり、しませんから……』
誉はまっすぐに夜光を見上げて、安心してほしくて、ふわりと笑ってみせた。