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藍城家の日常
第2章 出逢いのち初夜
バサバサっ!


折角綺麗にたたまれていた衣やら布やらが、たわんで宙に舞う。

あ、とそれを目にした瞬間、誉は体を床に打った。
ゴッと鈍い音がする。


『……っ』


痛い……!
誉は数秒痛みで身を縮めてから、がばっと起き上がる。


『ああっ!なんてことを……っ』

(お召し物が……)


床には無惨にもくしゃくしゃになった衣服が散っていた。

誉は顔を青ざめながら、慌てて服をかき集める。
これでは洗い直しだ。


(折角女官様がたたんでくださったものなのに、また怒られてしまう……私はどうしてこうも役立たずなのだろう……)


宮殿の下女として仕えて半年が経つ。
なのに、つい昨日も失敗をして叱責を浴びたばかりだ。

チクチク痛む胸の気持ちをぐっと堪えて、唇を引き締める。

ーーーと、


「……おい」


俯いていた誉の頭の上に、低い声が落とされた。
え、と思った瞬間、目の前に手が差し伸べられる。

大きな掌に長い指だと、誉は思った。


『あ』


ぎこちなく顔を上げる。


(さっき、扉で待ってた方)


差し伸べられた手の持ち主は、そこらへんの女官よりも遥かに美しかった。

殿方にそんな言い方をするのも変だけど……

間近で見て感じた。

陶器のようにきめこまやかな肌。
睫毛が長い。
本当に女かと思うほどの容姿だ。


『……っ』


誉は体が動かなかった。
時が止まったように感じた。


(瞳が赤い……)


深い血の色をしている。
柘榴石のようなその瞳がこちらを見据えているのだ。
じっと見つめていればいるほど、吸いこまれそうになる。


「……おい、女」


彼の声に、誉はハッと我に帰り咄嗟に手を取った。
少し冷たい手だ。

自力で立ち上がる前に軽々と持ち上げられてしまった。


「……」


男が無言で床に散っていた布を差し出したのを見て、誉は目を見開いた。


『申し訳ございません……っ、お客様に拾って頂くなんて。お見苦しいところをお見せしました』


布を受け取った誉はへこへこと、何度も頭を下げる。


「ふん……」


どうでも良さそうな表情が視界に入って、誉は少しほっとした。


『あの……「ねぇ、さっき……ゴッて、すごい音がしたけど……」


誉が口を開きかけたその時、背中に幼い子供の声がかけられた。



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