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藍城家の日常
第2章 出逢いのち初夜
ツルツルの床に細心の注意を払って、男の元まで行くと、彼は先程と変わらずに腕を組んだまま待っていた。


「遅い」

『お待たせして申し訳ありません!冷たいお水です』


誉は頭を下げて、おもむろに水差しからグラスに水を注ぐ。
それを差し出すと男は無言で受け取って、グラスに口を付けた。

ゴクリ、と微かに音が聞こえる。
仰いだ喉が上下している。

いつの間にか魅入っていた自分に気がつき、誉はそっと目を反らした。


(ただ水を飲んでいるだけなのに、何だか……)

「水」


ぬっと突き出されるグラス。
唇を手の甲で拭った彼は二杯目を要求した。


『あっ、はい!』

(よほど喉が渇いていたのですね)


誉は水をたっぷりと注いだ。
二杯目を飲み終え、男は、はぁ……と大きな溜め息を付く。


「ここは暑いな……いつもここで待たされるが、普通客人に立たせて待たせるか?」

『え』

「いい加減座らせろ……」


じろりと睨まれて誉の体は強張る。
待たされているお客様は痺れを切らす寸前なのだろうか。
それならば大変な失礼だ。


『はい……承知しました。えぇと、そちらに応接間がございますから、どうぞ』


ギィ……

誉はぎくしゃくと足を動かして、少し離れた応接間の扉を開いた。

応接間は誰も居ない。
窓は空いていて気持ちの良い風が吹き抜けている。

男が応接間の長いソファーのような椅子に座るのを見て、誉は一段落だと胸を撫で下ろした。


『そちらでお待ちください……では、失礼します』

「待て」

『え』

「水」


ぬっと差し出される手。
誉は慌てて三杯目を注いで渡した。

なのに、なみなみと汲まれたグラスには口を付けずに、男はそれを机に置いた。


『……』

「そこに居ろ。暇すぎてつまらん」


男は窓の外を眺めながら、ぽそりと呟いた。
風でふわりと髪がなびいて、仄かに柑橘類の匂いが誉の鼻腔をくすぐる。


『……承知しました』


誉は座った彼と扉の中間ぐらいの距離があいた場所で、両手を揃えて立っている。

そんな彼女を見て男は眉をひそめた。


「……何故そんなに離れる?」

『あの……私は下女ですから』


誉が小さな声で控えめに答えると、男はさらに眉間に皺を寄せた。


「関係ねぇ……もっと近くに来い」


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