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藍城家の日常
第2章 出逢いのち初夜
『は、はい……』


有無を言わさぬ声色に、自然と誉の足は動いていた。

誉は恐る恐る、長椅子に座る彼から少し離れて、腰を下ろす。

自分でも、緊張しているのが分かるほど、口の中がパサパサになっている。


「……藍城夜光」

『え……』

「名」


夜光と名乗った男はこちらを見ずに、ただ窓の外を眺めている。


『夜光、様』


誉の唇が、彼の名前を繰り返す。
素敵な名前だと誉は思った。


『素敵なお名前ですね……』


思ったことがずるりと口から出て、誉はびっくりする。


「……俺が名乗ったからには、女、お前も名乗らないわけにはいかねぇな」


こちらをゆっくりと振り向いた夜光は、日差しが眩しいのか、目を細めていた。


『ほ、誉。誉と申します』

「ほまれ」


その低く滑らかな声が、自分の名を紡ぐ。
美しい唇が、誉の名前をかたどり、小さく弧を描いて……

誉は目を丸くした。


「大層な名をもらったものだな……」


笑っている、あの、むっつりしていた彼が。

無表情やしかめっ面しか見たことのない者には、びっくりするほど優しい、そんな笑いかたをするのだ……


『ふふ……本当に、そうですね。でも、大切な名前なんです』


誉はつられて口角を緩める。
固まっていた顔の筋肉がほぐれて、やっと自分らしい笑みを浮かべられたと思った。


『ふ……ふふっ』


彼が笑った、たったそれだけなのに、どこか可笑しくて、嬉しい。

口元を両手で隠して、肩を震わす。
きくきくと笑いの止まらない誉を見て、夜光は呆れたような表情をした。


「よく笑うガキだ……俺より身分が下のやつは、俺の前でそんな風に笑わん……」

『 先程、身分は関係ないと仰ったのは夜光様ではありませんか……それにほら、笑うと健康に良い、病気にならないと言います。ですから、夜光様も』

「あ?」

『夜光様も、もっと笑った方が良いと思います。その方がお似合いです。どこかの王子様みたいですよ』


誉はにんまりと、悪戯っ子なような笑みを浮かべている。


「王子様……」


夜光は何かを疑うような眼差しで宙を見つめた。






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