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藍城家の日常
第2章 出逢いのち初夜
『えーーー』


夜光の言葉に耳を疑ったその瞬間、誉は腕を引き寄せられた。

それは、あっという間のこと。


ーーー口付け。

あまりにも唐突なことに誉は目を見張る余裕もない。
ただ、開けっ放しだった唇を彼の唇でこじあけられ、誉の無防備な舌が絡めとられる。

そんなの初めてのことだ。


『ふ、ふぅっ!んん……!は、ぁ……っ』


腰と頭を、しっかりと彼の腕と手で掴まれてしまっている。


ちゅ……っくちゅ……

ゆるりと口内を犯されて、重なった唇から、熱い吐息といやらしい水音が漏れ出る。

慣れない口付けに誉の顔が真っ赤に染まった後、銀の糸を作りながら夜光は唇を離した。


『ぷはっ!はぁっ……はっ、はっ、』


がくんっと体が崩れ、夜光の体に覆い被さる。
肘も膝も、立ち上げれずにカクカクしている。

まるで骨が抜かれたみたいだ……

何が何だか分からずに、ただ荒い呼吸を肩でしている誉を、夜光は抱き上げた。

彼はくつくつと笑っている。


「お前……処女か」

『!』


まだ赤みの引かない顔を上げて、誉は涙目で見つめた。

火照った頬に、髪が汗で張り付く。
恥ずかしくて声が出せない。

そんな誉の様子に納得し、夜光は溜め息を付いた。


「……悪かった。どうりで息の仕方さえ知らねぇのか……」

『……!……!』


誉は視線を送り付け、何か言いたげだ。


(窒息するかと思った……)


「はっ!お前のその低い鼻は何のためにある?口が無くとも鼻でしろ、鼻で。それに……」


夜光は息を整え上下する誉の肩に両手をだらりと置いて、口元を歪めた。


「何故あの時抵抗しなかった?しようと思えばできたじゃねぇか……抵抗を忘れるほど、気持ち良さそうにしていた奴にピーピー言われる筋合いはねぇ……」

『な……っ』

「反論あるならもう一回やるか?ん?」


近付いてきた口付け寸前の夜光の顔を誉は両手で押し離す。


「おい、何する」

『違い、ます……だって、とても、とても、急すぎて……頭が、ついていかなかったから……』


誉はまた黙って、やっと息を休めた後、自分の手の甲で唇を拭った。




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