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藍城家の日常
第3章 桃のシロップ漬け
誉の肌の上に、さらさらと音を立てて夜光の長い髪が降りかかった。

白い肩に藍色が流れ落ちる。


『……ん、んっ』


首筋に落とされた唇はずっと同じ所をさまよっていて、時折ぬるりとした舌や、固い歯の感触を感じる。


(いったい何をしているのだろう)


くすぐったさに誉は身をくねらせると、夜光は突然そこを強く吸った。

ぢゅぅぅっ


『ああっ!』


誉は小さく声をあげた。
首筋から唇が離れて一拍子すると、やがてまた強く吸い付いてくる。

繰り返し吸われた所が、ヒリヒリ痛む位になると夜光はやっとその動きを止めた。


『夜光様、何を……?』


自分の様子をうかがいなら尋ねてくる彼女に、夜光は何でもないと言うように首を振った。

誉には見えないその白い首筋には、
赤く滲んで咲いた証が、ついていたーーー


「……気にするな」


トン、と胸を弱く押される。
布団の上に身を預けた誉が、ふと余所見をしていたその次の瞬間、

ひやっとしたものが肌に落ちた。


『えっ!?っ、つめた……っな、何……?』


誉はびくりと反応する。

とろりとした透明な液体が、夜光の持っているガラスの水差しから、流れ落ちてくるーーー


『あっ……ぃや……』


起き始めた蕾に、ポタッと雫が跳ねる。
へそに溜まった液はやがて溢れ出して、外側へと伝う。


鎖骨、胸、腹へと、ほのかに甘い香りを漂わせるそれは、誉の体を無造作に濡らしていった。


「万歳しろ」


不意にそんなことを言われて、


『えっ?』


誉はきょとんとする。


「ば・ん・ざ・い」

『は、はいっ……ぁっ』

ひた……っ


慌てて腕をあげると、脇から手までにかけて液を落とされる。

そうして、夜光は彼女の体に馴染ませるように指を滑らせた。


『あっ、あ……ふぁ……っ』


腕から脇へ、胸元から首筋まで登って、折り返して腹部へと下がっていく。

まるでマッサージを受けているような感覚。


(気持ちいい……)


くすぐったさと、心地よさと、気持ちよさで、誉はとろんと瞳を潤ませた。


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