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藍城家の日常
第4章 手取り足取り腰取り
嫌われてしまったのだろうかーーー
誉の胸の内はじわじわと焦りと恐怖に蝕まれていく。
「あのようなこと、とは?お前は一体何をしていた?」
そんなこと、口に出すなんて憚るような恥ずかしいことなのに、夜光の眼差しは有無を言わさない。
逆らったら、もっと悪い方向に行って、もっと嫌われてしまうかもしれない。
それが怖くて、誉はぎゅっと噛んでいた唇を思い切ったように開いた。
『……じ、自分で自分の体を慰めておりました……っ』
「何故?」
『体の奥が、変で……どうしても、我慢、できなくて……本当に、ごめんなさい……』
ツっ……
『っ!!』
衣を纏った誉の体。
その中の潤い切ったところから、雫が一粒滴って太腿を伝うのを感じて、焼けるように熱い頬が、一層燃え上がる。
ぴくっと体を震わせたが、気づかれまいと振る舞う誉を知ってか知らずか、夜光をそんな彼女の様子を横目で見つめていた。
少しの沈黙の後。
「駄目だな……」
溜め息交じりに彼はそう呟いて、バサッと目を通し終えた書類を机に放る。
「俺がいつ、出張中には自慰をして凌げと言った。自分だけが我慢していると思っているのか?」
『え?』
きょとんとする誉に、夜光は呆れながら首を回すとポキポキと音がする。
さらさらと流れる艶やかな藍色の髪の中から現れた首筋に、誉は自然と目が行ってしまう。
微かに動く筋や形を変える影、なんて艶めかしいのだろう。
見惚れている自分に気付いて、誉はパッと視線を下した。
「時を置いて耐え凌いだ後の快感は、男も女もそれはもう普段の比じゃねぇ……お前はそれを知らないようだから、今から証明してやる……」
『それは、ど、どういう意味ですか?』
……何だか、嫌な予感がする。
「……仕置きだ」
腕を組んだまま椅子にもたれる夜光は、首だけこちらに向けて、にやりと不適な笑みを浮かべていた……