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藍城家の日常
第4章 手取り足取り腰取り
そんなことを言い放つ夜光に、誉は頷くことしかできなかった。


ーーーーー


誉の体の中で堰き止められている、
快感の波の吐き捨て場を完全に断たれてはや一週間が経った。

……いや、誉自身にとっては、実際一週間よりももっと長い時間に感じているのかもしれないが。


『……、……』


いつものように屋敷の掃除をしている誉は、床を磨いていた手を止めて、雑巾を握りしめる。
ギチッと固く固定された貞操帯が、体勢を変える度に食い込んで、縛り付けられているような感覚にどうしても慣れないのだ。


「誉?あんた、大丈夫?」

『っえ!?』


一緒に掃除をしていた架音に、不意に声をかけられて、誉は目を瞬いた。
猫のようにつりあがった大きな瞳がこちらをじっと見つめている。

何を大丈夫?と聞いているのか、誉は内心ひやひやしていた。
まさか……


「顔、何だか赤いし熱でもあるんじゃない?やっぱり昨日風呂でのぼせたのがいけなかったんじゃないの」

『ぁ……ああ!えっと、これは風邪ではなくて……本当に体の調子は悪くありません、ただ、最近暑くなってきたから……これから本格的に暑くなりそうなのに、これでは駄目ですね……』


良かった、違った。
誉はホッと胸を撫で下ろしながら、乾いた笑い声を出した。


「風邪じゃないなら良いんだけどさ。確かに最近暑いよねぇ……そうだ!夏の着物、そろそろ出しとく?」


架音は持っていた雑巾を水の入った桶に放り投げて、パチンと手を叩いた。


『夏服ですか?』

「そ!あたしのおさがりになっちゃうけど、ぜんっぜん着てない浴衣があるんだよね。大きさは誉にちょうどいいんじゃないかなー……丈合わせするから今日試しに着てみ?」


目を輝かせる彼女と裏腹、誉は何とか笑みを保っていた顔を、とうとうギョッとした表情に変えてしまった。


『駄目です!!』


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