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藍城家の日常
第4章 手取り足取り腰取り
微かに障子が閉まった音と、遠ざかっていく足音が聞こえる。


『ぅ……っふー……、ふーっ、ふっ』


訪れた静けさの中で、肉棒をくわえたままの誉の荒い呼吸だけが書斎に響いていた。



頭を掴んでいた夜光の両手が緩くなったので、



『かは……っ!』


誉はすぐさま、勢い良く頭を上げた。


『……っげほ……こほっ、ぅ、ん……は、はぁ……っげほっ!』


激しくむせ込んで、広げた両手に口の中に溜まっていた白濁を吐き出す。

そうして、誉は深呼吸を繰り返した。
ようやく息苦しさから解放されると、込み上げていた吐き気も引いてくる。

誉はキッと、夜光を睨んだ。


「何だ……その反抗的な目は」

『いくら、なんでも……酷いでは、ないですか……!』


誉の顔は涙と唾液と汗でぐっしょりと濡れて、目尻や頬は赤みを帯びている。

耐えきれないで声を上げたら絶対に見つかっていた。
ひょっとしたら、もう感づかれている可能性だってある。

何てこと!

怒りやら恥ずかしさやらでプルプル震えている彼女を、夜光は一瞥しただけ。


「知るか……たまたまだから仕方ねぇだろうが……それよりも、誉。吐き出しやがったな……」


グッと顎を強く掴まれて、持ち上げられる。


『……まさか、飲めと?』

「そういうものだ」


飲む?
信じられない。
眉を潜める誉に、夜光は無表情で頷いた。


『そんなこと分かりません!今日は飲め、なんて仰っていませんでした。それに……』


誉はさすがに反抗的になって、顔を歪めべっと赤い舌を出す。



『……不味いです、これ……』


まだ舌の上に、生臭い匂いや、粘っこい感触や、苦い味が残っている。
すごく変な感じだ。


「……なら、慣れるしかないな?言っただろ……これからお前の義務になると。それに、義務を全うすると言ってたのはどこの誰だ……?」


掴んだ顎をこちらに向けて、ずいっとその綺麗な顔を近付けた夜光。


『ぅ……』


口元に悪い笑みを浮かべた彼の威圧感に負けじと、誉は睨み返すも、結局怯んでしまう。


「これからゆっくり教えてやる……」

『……っ』


意地悪なその表情と口調とは裏腹に、誉の頭を撫でる手だけは優しい。
そういうところ、ズルいと思う。

誉はまた、燻った熱の出所を塞がれて、翌日を過ごすことになってしまった。

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