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第27章 群がる蟻たち

　高梨は、荷物を持ってその場を離れていく。
　千鶴と二人きりになったところで、柚子はこの後何が起こるのか、というところに気が及んだ。

　「あ、あの…ちららさん…今日、って…その…もう？」
　「うん。大丈夫よ。ちゃんと準備は出来てるわ。」
　「えっ！？うそ…そう、なの…」

　つまり、このまま千鶴の家に行けば、千鶴が用意した「殿方」がたくさん待っているということになる。今日が来るまでの間ずっと妄想していたことではあるし、それが期待でもあったにもかかわらず、あと数時間もすればそのような状況に投入されて本当に全身を凌辱されるのかと考えれば不安と躊躇に襲われる。

　一方で、準備された男たちの中にあの運転手は入っているのだろうか、などということも考えてしまっていた。

　しかしここまで来て、やっぱりやめる、と言えるようにも思えない。心中は混迷し、柚子は黙りこんでしまった。
　千鶴は少し不思議そうな顔で首を捻った後、柚子を安心させるように微笑みかけた。

　「そんなに緊張しなくても、いつも通りで大丈夫よ。…あ、来たみたいね。」

　そう言って、千鶴はロビーの外へ視線を振った。