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§ 龍王の巫女姫 §
第6章 凌辱の初夜

水鈴は簪を男に振り下ろす。

「──…」

「…っ…ハァ、くッ」

しかし炎嗣は身を翻し、容易く刃をかわした。

バランスを崩した水鈴は床に崩れ衣のすそが乱れる。


転がった簪は、拾うより先に彼の足に踏まれた。




「ふっ、閨房に来た狙いはこれだったか…。物騒な物を持っているな?村の人間に渡されたか」


床に倒れる彼女に冷たい声が降りかかる。


「あの村で隠されていたお前が無知なのは仕方のない事だ。──しかしこれはあまりじゃないか?王の暗殺を企むとは、…こんな物で」


かがんで簪を手に取り、彼は隅の調度品に適当にしまった。

そして無謀な事をした水鈴を、怒るというより同情に似た目付きで見下ろした。




「…ハァ…ハァ…っ」


水鈴は床に突っ伏したままむせび泣く。



本当なら、もっと慎重にこの男を殺してしまおうと思っていた。皆の仇をとる筈だったのに。


けれど花仙のことで気が動転し

とても冷静でいられなかったのだ。



“ 神様…!! ”

水鈴は声に出さない悲鳴をあげる。


“ わたしには何もできないのですか!? 村を滅ぼされ……大切な人を殺されて ッ ”


仇を前に何もできない。

自分の非力さを恨むしかない。



“ なら何故わたしだけを生かされたのですか!? ”


無力なら、いないのと同じだ。


憎き男に抱かれるくらいなら…


わたしも皆と同じところに行かせて下さい…!!




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