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§ 龍王の巫女姫 §
第7章 蕩ける果実
部屋の隅に位置する円卓に向かった彼は、木の皿に盛られた果実に手を伸ばす。
だが真っ先に手にしたのは
そこに添えられた鋭利な刃物だった。
「例えば…これで俺の喉をかき切るか。その心構えを持てるか?それでこそ復讐だろう」
「…復讐をすれば何が変わるのですか?」
「…それを俺に問うのか?──クッ」
彼女は真剣だったし、これは興味本意の疑問などではない。けれど炎嗣はその真剣さを嘲笑った。
復讐に理由付けをする者はいくらでもいる。だが、そこにどれだけの価値があるかを考える人間がそのうちのどれだけを占めるだろうか。
「そんなものは俺を殺したときに初めて知り得るものではないのか?」
「──知りたければ貴方を殺せと、そう言うのね」
「その通りだ…」
水鈴の答えを聞いて彼は満足そうに頷いた。
右手に刃物を、左手に果実をとると
赤色の果皮に十字の切り込みをいれた。