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§ 龍王の巫女姫 §
第7章 蕩ける果実
「それは…」
「石榴( ザクロ )だ。此処の外では滅多に食せる果実ではない」
子孫繁栄を象徴する果実である石榴は、この国では特別な果物だった。その果皮は漢方にも使われるし種子も乾燥させて煎じ薬に変わる。
王宮には専用の果樹園が用意されていて、高貴な者が好んで食べていた。
「食すがいい。昨日は用意された食事をほとんど口にしなかったそうだな?」
十字の切れ込みから、白い果肉が、内側には沢山の赤い粒が詰まっていた。
「…い、いりません」
水鈴は首をふる。
確かに、昨夜に出された料理は普段の食事とは見た目からして異なるもので、少し口をつけたところで箸は止まってしまった。
その味付けに違和感しか感じなかったからだ。
「村の巫女姫様も、これなら苦もなく食せるだろう?」
「貴方にほどこしなど…」
「復讐には体力が必要だ。俺がそのための糧( カテ )を与えてやろう」
皮肉な言い回しで水鈴に近付く。
その手に熟れた果実を持って──。