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§ 龍王の巫女姫 §
第8章 託宣( タクセン ) ── 若王の秘密
「龍のシルシ?──それって‥」
水鈴は、自分が《龍の子》なのだと炎嗣に言われたことを思い出す。
「…水鈴様のその御髪は、預言の内容と一致しております。『龍の髪を宿す者』が、預言の子供のうちのひとりだと」
「龍の子は、ひとりではないのね?」
「そのようです。…当時には、陛下、つまり炎嗣様と…──」
「……?」
「……いえ、炎嗣様が、預言の子供として王宮に迎えられました。帝は炎嗣様を後継ぎとして教育なさったのです」
一瞬だけ、女官が何か言いよどんだような気がしたが…、水鈴は聞き流すことにした。
「──…これでお分かりですか?何故、陛下の前でしきたり等と口にするのが無礼となるか」
「…ええ、何となくですが…」
つまり、炎嗣という王の存在自体が、しきたりを真正面から破っているからだ。
彼は王族でもなければ貴族ですらない。
親も家も持たない…小汚ない子供でしかなかったからだ。