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§ 龍王の巫女姫 §
第8章 託宣( タクセン ) ── 若王の秘密
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「朝の食事に薬が混ざっていたの…!?」
騙された。
そう思った水鈴の脳裏には、付き人の女官の顔が浮かぶ。
──…しかし、そういうわけではないようだ。
「今ごろは、あの女官が大慌てで貴女を捜しているでしょうね。まさか既に、王宮の外に連れ出されているとも知らずに」
「……っ」
「ここは離れにある私目の私邸です。助けが来ることはありませんよ…ふふ」
部屋に立つその男は、五十近い壮年の、臣下の服を着た者だった。
峭椋村の村長と同じ年頃でありながら、でっぷりと太った腹と脂ののった顔は、普段のだらしがない生活を表している。
男は手を伸ばし、水鈴の頬に触れてきた。
「…いや…っ」
「そのように暴れては、手首を無駄に痛め付けることになりますぞ」
嫌悪感しかない。
逃れようと身をよじれど、よけいに紐がくい込むだけだ。
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