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§ 龍王の巫女姫 §
第9章 龍は孤独を歩む
「恐ろしかったか…」
円卓の蝋燭に半月刀をかざし、その切っ先の状態を灯りで確認しながら、水鈴に背を向けて彼は問い掛けた。
「…無理ないな。あんな老いぼれの手に掛かるなど想像するだけで不憫だ」
「…っ…あなたに何がわかると言うのですか」
胸に片手をあてて自身を落ち着かせながら
上半身を起こした水鈴。
「誰もかれも…どうしてこんな事ばかり…っ」
「──…」
「…ハァ…おかしい」
「…巫女姫様には、低俗な男の欲望は理解不能か」
「あ、あなたも、同じです…!!」
「──フ…ああ そうだな」
本来ならば、そのまま振り返って首に刃を突き立ててもおかしくない、無礼な言動。
けれど炎嗣は刀を鞘におさめた。
「…確かに王宮に住まう人間からは、多かれ少なかれ腐敗の臭いがする」
王宮に君臨する李国の王は
その言葉とともに皮肉を籠めて笑った。