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§ 龍王の巫女姫 §
第9章 龍は孤独を歩む
炎嗣がその力に目覚めたのは…
彼がまだ、僅か七の歳になろうとする頃。
──それは、親のいない炎嗣が孤児院で暮らしていた時の出来事だった。
ある夜、皆に配られた食事の粥( カユ )に
黒く、不吉なモヤのような…影のようなものが纏わりついていた。
食事を残すと怒られる
けれど、彼はとてもその粥を食べる気にはなれず、人知れず捨ててしまった。
食事を終え、炎嗣は他の孤児達とともに床につく。
…しかしだ
子供達が寝静まった真夜中
侵入してきた何者かに、彼等は連れ去られた。
異変に気付いた炎嗣は、周りの子供を起こそうとした。けれど…誰も目を覚まさない。
炎嗣はひとり抜け出した。
そして直感したのだ。
もしあの粥を食べていたなら、自分もまた、何も知らぬまま連れ去られていたのだと……。