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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
今になって後悔したところで、もう、何もかもが手遅れなんだ。
だって、花仙とはもう二度と
隣に立って歩くことができないのだから。
「……」
炎嗣の背中を見詰める彼女の目は、みるみるうちに細まっていく。
その時
「──…おい」
炎嗣が、振り向いた。
振り向くはずのなかった背中。
「──…!!」
「いつまで後ろを付いて歩く気だ。急いで俺の横に追い付け。わざわざ平服を用意させたのは何の為だと思っている?」
炎嗣の頭についた簪が、提灯の灯りできらり光る。
「道に迷って俺の手間を増やすな…世間知らずの、巫女姫」
彼はふんと鼻を鳴らした。