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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
振り向いたまま、動かない炎嗣。
水鈴は彼の隣に追い付いた。
「俺の視界から消えないようにしろ。言う通りにできるのなら、お前が欲っするものを与えてやるよ。気になる店を見つけたなら教えろ」
「…!? そんなこと…」
「──…口答えは、いらん」
「……っ」
炎嗣が彼女の手をとった。
返事もまだなのに、ぐいと引かれてしまう。
「ああ…そういえば、王の伽( トギ )をした妃嬪には何かひとつ褒美をやるのが " 慣例 " だったな…」
おそらく一度も賜ったことなどないのだろう。思い出したように彼が呟いた。
「いったい何をたくらんで…!!」
見上げる水鈴は反抗的な目を炎嗣に向けた。
平服に着替えて身分を隠し、彼が何をしようとしているのか…
水鈴には検討がつかなかった。