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§ 龍王の巫女姫 §
第2章 峭椋村の巫女姫
水浴びを終えた彼女は濡れた身体を手早く拭き、今朝方に木の根元に隠しておいた服を取り出した。
それは市場で女人が着ていた形とは異なるもので、襟つきの白い衣を前を重ねて着こみ
帯を絞めるかわりに紅の袴( ハカマ )をはき付けた。
長い銀髪は、横の髪だけをまとめ緩く結い上げ、そこに一本の簪( カンザシ )が飾られる。
その光沢ある黒曜の簪は、肌身離さず持ち歩くように彼女が昔から言われているものだ。
「…おすみですか、水鈴様」
「ええ、もう良いですよ」
木の幹に背を預け湖の反対側を見ていた彼が声をかける。
準備の整った彼女は、もうこちらに来ても構わないと合図を送った。
本来の巫女姿に戻った水鈴を
花仙は溜め息とともに確認した。