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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機
───…
怪我を負った炎嗣が運び込まれたのは
《連れ込み部屋》と呼ばれる宿館( ヤドヤ )だった。
ひっそりと下げられた看板
簡素な入り口
──…そこは、男と女が人目を盗んでしけこむ為の宿であった。
そこが相応しい場所かはわからないが、緊急を要するために細かいところは気にしてられない。
王宮へ走った侍衛は急いで医官を呼び寄せ、王の治療にあたらせた。
遅れた水鈴が宿に入った頃には、既に視療を済ませた医官が、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「命に別状は御座いますまい…」
「…それは本当か…!!」
「背骨が無傷でなにより助かりました…。脊髄が負傷していようものなら後遺症はまぬがれなかった」
不幸中の幸いで御座います
医官は侍衛の二人にもそう伝え、知らされた彼等の顔には若干の血色が戻ったように感じた。