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§ 龍王の巫女姫 §
第2章 峭椋村の巫女姫
「お帰りなさい水鈴様!」
籠いっぱいの人参を抱えた女性。
「おっ…村を抜け出した巫女様のお帰りだぁ!」
逃げた鶏を捕まえながら叫ぶ老人。
「どこに行ってたの?」
「都です…」
「なんだってぇ!? あんな恐ろしい所に!?」
「どーしてそんなことするかな…ハァ」
ぞくぞくと集まってきた村人達は、都へ行った彼女を信じられないと言いやじる。
だがそれも彼女を心配する故だ。
「…まったくのう…、水鈴様は私たちの宝物だよ?危ない真似はよしておくれ」
「…はい、ごめんねお婆ちゃん」
峭椋村は小さな村だ。
村人はわずか五十人ほど。
《皆が知り合い、皆が家族》
村の外へは滅多に出ない。ましてや王都のような恐ろしい場所になど踏み込まない。
暮らしはすべてが自給自足で
王や国政にすら頼らない。
それがこの村での生き方だった。
「水鈴様が無事に帰ってきて、良かったわよ」
「…みなさん…」
「まーーったく良くなどない!!!」
「…!」
村長~っ
「…ついて来るのだ…、水鈴」
村人の後ろから現れた初老の男が、怒りを秘めた後ろ姿で水鈴を連れて行った。