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§ 龍王の巫女姫 §
第13章 都を離らば
「いったい何処を目指して…こんな所へやって来たのだ」
「……何処にも」
「…そうか、なら帰るがよい。ここにお前さんの死に場所はないぞ」
「……」
老人はその時、男の口が切なく微笑むのを見た。
彼は与えられた飯に手をつけようとせず、頭を垂れたまま暫くの間止まっていた。叱られた子供のように。
此処でもなかったのか…
此処も彼を受け入れてはくれないようだ。
「…水と…食料を、感謝します。御老人」
男は片手をついて よろけつつも腰を上げる。
そのまま家を出ていこうとするので、老人は彼の背中に声を掛けた。
「仮にお前さんに、帰る場所すらないのなら…」
「……」
「…思い出の地へ、戻ってみるがいい」
「──…なるほど」
男が振り返ることはない
「それも良いかもしれませんね」
「達者でな」
彼は再び、白砂に足をつけた。
老人に別れを告げた彼は、まだまだ夜の明けぬ広大な砂の海へと足を進めていったのだった。
────…