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§ 龍王の巫女姫 §
第13章 都を離らば
あまり大胆に顔を出すと危険だといって止められるから、鼻が少し出ているくらい。
「まぁ…とくに面白い物が見えるわけでもないが」
先ほど滞在していた村からは遠く離れていた。
集落や田畑はもう見えなくて、数頭の牛が黒い点となって微かにいるだけ。
草木はあまり多くなく、大きな岩がそこかしこにそびえる。
炎嗣の言葉通り、殺風景な眺めだった。
「……」
どうして木が失くなってしまったのだろう。
そんな風に水鈴は思ったが、それを声に出して炎嗣に伝える元気はなかった。
“ 木々の恵みもない中で、どうやって暮らせばいいのかしら ”
森と湖に囲まれた峭椋村で育った彼女にとって、それが大きな疑問になるのは仕方がない。