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§ 龍王の巫女姫 §
第13章 都を離らば
でも…だからといってこの地に生きる人々はそれを苦にしている様子はなかった。
ここの風土にあった食べ物、家畜、住居で、峭椋村とはまた違う暮らしをしていた。
みんな笑顔だったし
口を揃えて「陛下のお陰です」と感謝していた。
「……(チラッ)」
水鈴が前に座る彼を盗み見ると
肩肘を窓の桟に預けた炎嗣は、くつろいだ様子で外を眺めていた。
“ この人が本当に王なのよね… ”
改めて彼を観察するも、受け入れがたい。ふとすると忘れてしまう。
それは炎嗣の若さ故か…
時折のくだけた口調故か…
李王としての炎嗣がどのような男なのか、公務中の彼を知らないから水鈴には想像しにくかった。
“ ちゃんと知りたい ”
そう思うようになったのは最近の事で。
“ この国のことも、この人のことも… ”
何も知らない自分は嫌だ。