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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
朝起きての清水の水汲みは、巫女としてのかつての務めであった。
「この時期は寒いでしょうに…」
「平気だもの。それにわたしは正式な妃嬪でないのですから…そんなに畏まらないで」
「そうは言ってもですねぇ」
水鈴と話すこの老婆は、桃源郷の離宮管理を任されている使用人だ。
李国の王が連れてきた寵妃ならそれ相応にもてなさなければならない。
なのにこの美しい娘ときたら…
暇だと言いながら仕事の手伝いを始めたのだから驚きだ。
「これを離宮まで運ぶのよね」
水鈴は足の水気を布で拭き取りながら老婆に話しかけた。
紐もほどいて、なるだけ綺麗に衣服をただす。
「そうでございます。ここの水は格別…どのような料理にも重宝しますよ」
「確かに清らかだわ。さっき少しだけ飲んでみたけど…透き通った甘さがあって」
「ほぉほぉ…そうでしょう。この水から作る茶は、陛下も気に入って下さっております」
「──…炎嗣様が?」
ふぅん、そうなの…
「…なら早く。わたしもそのお茶を頂きたいです」
「ああ…っ、これ水鈴様…──重いですからどうか桶をこちらに…!!」
「平気です!」
離宮の裏にある老婆の家に彼女はそれを持っていった。