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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
使いの男は立ち去った。
「おはようございます。その…立ち聞きするつもりはなくて」
「何かあったのか?」
「──…これを炎嗣様に持ってきたの」
部屋に入っていいものか、
漆塗りのお盆を両手でしっかり持って考えていた水鈴は、少しして敷居をまたぐ。
炎嗣は座椅子に腰掛けたまま、手にしていた書状を卓上に置いた。
「この香りは…」
「呂夫妻からですよ」
「やはりそうか、芳ばしい」
茶器には蓋をしてあるのに、匂いだけで当ててしまう。呂夫妻の茶を炎嗣が気に入っているというのは本当らしかった。
彼の眉間に寄っていた皺がなくなる。