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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
そんな些細な事に気付いた自分が、恥ずかしくなってしまう水鈴。
「あと、餅菓子もどうぞ」
「そこに置けよ」
炎嗣は散らかった卓上を適当に片付けて水鈴を促した。
ふたつの茶器と小皿を置いて彼女は隣に座る。
──こうやって二人で食事をするのは、離宮に来るまで許されなかった。
王は寵妃と食卓を共にしてはいけない…これも慣例のひとつらしい。
ここで初めて炎嗣と夕餉( ユウゲ)を食べた時、嬉しかったのを水鈴は覚えている。
峭椋村ではひとりの食事が基本だったし、王宮では、女官の見張りの中でやはりひとりで食した。
そんな彼女にとっては特別な時間だ。
食事を共にする時間は──
共に生きていることを実感する時間だと思う。