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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
のし掛かっていた彼がいなくなり、水鈴はひとり仰向けに倒れていた。
「……」
震える腕でなんとか身体を支え
横を向いて座り直す。
“ わたしが造った世界…。わたしが望んだ世界 ”
暗闇の中、氷の壁に閉じ込められた自分。
たったひとり…ひとりぼっち。
「──…水鈴」
「…っ」
自分を呼ぶ声
この声は、花仙じゃない。
顔をあげると氷の向こうに男の姿が揺らいでいた。
「炎嗣様……」
初めはよく見えなかったが、彼がこちらに近付くにつれてその輪郭もはっきりとしてきた。
彼は本当に、紅い深衣( シンイ )がよく似合う。
.......
「…帰るぞ」
炎嗣はそう言って、氷に手を付けた。