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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
分厚い氷は、炎嗣であろうと壊せない。
「さっさと出てこい」
「出られません…」
「…この壁はお前の心が造った物だ。お前の想いひとつでどうとでもなる」
「ごめんなさい、わたしは出たくありません…っ」
「……!」
顔を背けた水鈴は小さくうずくまる。
「わたしはここにいます。ここなら誰にも迷惑かけないし…」
「──…」
「……それに、哀しく、ないから」
外の世界は哀しすぎる。
現実は残酷すぎる。
このまま逃げていたい。耳をふさいで目を閉じて、殻の中に閉じ籠っていたい。
「…この場にとどまれば…お前は死ぬぞ」
「……」
「それでもいいのか」
炎嗣に冷静に問われれば、水鈴は力なく頭を縦に振る。
「もう…いいんです」
生きていたって辛いことしかないから。
もう何も知りたくない。
哀しい真実は知りたくない。