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§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
「狭い場所が苦手なのか…」
行きの時の彼女の様子を思い出しつつ炎嗣は呟く。
輿の揺れで酔っているのだとばかり思っていたが、そうではないらしい。
その証拠に彼女の顔は早速 青白い。
「──…目を閉じるな、水鈴」
「ぇ…? でも」
「目を閉じたところで思考がこわばるだけだ…身体も緊張する」
輿が動き出した。外から出立の掛け声が聞こえ、足音がまばらに増えていく。
「そっか…──、うん?え、そうかな…」
一瞬、炎嗣の言うことに納得しかけた水鈴は目を開けたものの…
ちょっと待ってと、疑問をいだく。
「…俺を見ろ」
「……!」
「俺だけを、見てろ…」
水鈴はうっと言葉を呑み込んだ。