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§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
「昔──無遠慮に人の顔を見すぎだと、嫌がられたこともあったな」
「昔って、炎嗣様が子供の時?」
「そうだ」
彼がそれを言われたのは王宮に来てすぐの頃だが、相手の顔をじっと見つめるのは幼いときからの彼の癖である。
「目は口ほどにものを言う…──、そうやって俺は汚い大人の世界で生き延びてきた。そのための知恵であり手段が…こうやっていつの間にか癖付いていたらしい」
「…そうだったんですね」
彼だって本当は誰も疑いたくなかった…
そうに違いないのに。
水鈴は違う意味で胸が苦しくなった。
「…まぁ、別にお前に何かを疑っているわけじゃないから安心しろよ」
“ わたしは疑わないの…? ”
彼女は別だと言う炎嗣の言葉は、素直に嬉しい。