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§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
当たり前だが、戸を開けたところで外の衛兵たちに見つかる。
何事かと慌てる彼等の前で炎嗣は変わらず堂々としていた。
「陛下、どちらへ向かわれるのですか?」
「…気分が晴れない。集落の外を散策してくる」
「へ…? しかし、この周辺は山に囲まれて…」
「肩掛けを持ってこい」
「陛下…っ もうすぐ都ですのでそれまでご辛抱を」
「お前、この俺に風邪をひかせる気か」
会話が成り立っていない。
横で見守る水鈴は、衛兵を気の毒に思う。
“ でも良かった。抜け出すなんて言うものだから、誰にも言わずに窓から逃げる気かと… ”
さすがにそこまではしなかったことに安堵しつつ、彼はどこに行きたいのか見当もつけずにいた。